民事執行法改正が改正されました。
民事執行法が改正・施行されました。
強制執行とは、債権者の申立てによって、裁判所が債務者の財産を差し押えてお金に換え(換価)、債権者に分配する(配当)などして、債権者に債権を回収させる手続です。
債権者は、勝訴判決を得れば、強制執行の申立てをすることができ、債務者の財産から強制的に自分の債権の回収を図れることになります。
しかし、強制執行をするためには、債権者の側で債務者の財産の所在等の具体的内容を特定する必要があり、これを知らない債権者は、結果として、強制執行を申立てることを諦めざるを得なくなっておりました。
このような事態を防ぐため、この度、強制執行手続きを定める法律(民事執行法)がの一部改正され、より強制執行を行いやすくするための制度が新設・拡充されました。
・第三者からの情報取得手続きの新設
・財産開示請求の拡充
第三者からの情報取得手続きの新設
今回の改正により債務者以外の第三者から債務者の情報取得できるようになりました。
例えば、金融機関から預貯金債権や、上場株式、国債等に関する情報が、法務局から土地・建物に関する情報が、市町村・日本年金機構等から給与債権(=勤務先)に関する情報が取得することができるようになりました。(但し、給与債権に関する情報取得手続きは養育費等の債権や、生命・身体の侵害による損害賠償請求権のみが対象になります。)
不動産に関する情報取得手続(改正民事執行法205条)
債務名義(例えば判決、和解調書、公正証書(執行認諾文言付)、仮執行宣言付支払督促)を有している債権者等は、裁判所に申し立てることによって、裁判所は、登記所に対して、債務者が登記名義人となっている不動産の情報の提供を命じることができます。
この手続によって、債務者名義の不動産の存在が明らかにすることができ、この不動産を対象に強制執行を申立てることにより債権回収を図ることが可能となります。
なお、この手続を利用するためには、まずは、後に説明します財産開示手続を経なければなりません。
給与債権に関する情報取得手続(改正民事執行法206条)
養育費や婚姻費用等の扶養料債権、、損害賠償請求権(人の生命若しくは身体の侵害)についての債務名義を有している債権者は、裁判所に申し立てることによって、裁判所は、市町村、日本年金機構または厚生年金の実施機関に対し、債務者の給与債権の情報(勤務先の情報等)の提供を命じることができます。
この手続によって、債務者の勤務先を明らかにすることができ、給与の差押えの強制執行を申立てることにより債権回収を図ることが可能となります。
なお、この手続を利用するためにも、まずは、後に説明します財産開示手続を経なければなりません。
預貯金債権等に関する情報取得手続(改正民事執行法207条)
債務名義(例えば判決、和解調書、公正証書(執行認諾文言付)、仮執行宣言付支払督促)を有している債権者等が裁判所に申し立てることによって、裁判所は、銀行等の金融機関に対して、預貯金債権の存否並びにその預貯金債権が存在するときには、その預貯金債権を取り扱う店舗並びにその預貯金債権の種別(ex:普通預金、定期預金)、口座番号、その金額といった情報の提供を命じることができます。
この手続によって、債務者名義の預貯金の存在及びその預貯金に関する情報を明らかにすることができ、この預貯金債権に対して強制執行をすることで、債権回収を図ることが可能となります。
なお、この手続については、後に説明する財産開示手続を経る必要はありません。
今後は、第三者から情報を取得することで、判明した財産に対して強制的に権利を実現することができるようになりました。
債権回収などの裁判で勝訴したにも関わらず、債務者が支払いを行わない場合、債権者は強制執行を申し立てることによって債務者の財産を差し押さえることができます。
財産開示手続きの拡充
平成15年の民事執行法改正により、「財産開示手続」という制度が新設されました。
この財産開示手続は、強制執行をしても完全な債権の回収ができなかった場合や、できる限りの調査をしても債務者にめぼしい財産が無かった場合等に、勝訴判決や調停調書(調停における合意の内容を記載した書面)等を有する債権者の申立てにより、裁判所が債務者を呼び出し、非公開の財産開示期日において、債務者に自己の財産について陳述させる手続です。
しかし、裁判所から呼び出しがあっても、出頭しない債務者も多く存在した等の理由から、この制度には実効性に疑問があり、あまり利用されてはいませんでした。
そこで、この度、債務者に対する罰則が強化され、また、申立権者も拡充され、実効性の高い制度へと生まれ変わりました。
このような民事執行法の改正により、強制執行による権利実現・債権回収の可能性が高まり、今まで、回収を諦めていた債権者の方々にとっては朗報と言えます。
是非、一度、ご相談くださいませ。