売掛金の「消滅時効」
期日を過ぎても売掛金が回収できないということは、事業をしていると少なからず起こってくるものです。
売掛金を予定通りに回収できないと、キャッシュフローにも影響が生じます。
そればかりか、何もせずに放っておくと時効となって消滅してしまうことをご存知でしょうか?
売掛金の消滅時効と、時効を中断させるためにすべきことについてお伝えします。
債権の「消滅時効」とは
債権には「消滅時効」という制度があります。
これは、債権者が債務者に対して請求などを行わずに一定の期間が経過した場合に債権が消滅するというもので、「権利の上に眠る者は保護に値せず」という考え方にもとづいています。
時効は、期間が過ぎたら直ちに成立するというわけではなく、債務者が時効であることを主張すること(時効の援用)によって成立するものです。
※2017年5月26日、「民法の一部を改正する法律案」と「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」が成立し、6月2日に公布され、消滅時効に関する民法の規定も大幅に見直されました。
なお、改正民法が実際に施行されるのは、公布の日から起算して3年以内の政令で定める日ですので、ここでは、改正前民法を前提にお話しをします。
売掛金の消滅時効は極めて短期?
現行民法上、商取引の債権に対する時効期間は、取引内容ごとに定められています。
一般的な債権の消滅時効は支払いを請求できる日から10年と民法で定められており、商取引に関連する債権の時効は5年と商法で設けられているのです。
ただし民法には「短期消滅時効」というものがあり、頻繁に発生する複数の債権については、上記より短期間の時効期間が定められています。
商品や生産品の売買代金もこの短期消滅時効となる債権に含まれており、2年で消滅時効となります。
つまり未回収の売掛金は、何も行動を起こさずに2年が経過すると、相手が時効を主張した場合に時効成立となってしまうというわけです。
時効を中断させるには
先述のとおり、債権者が権利を行使せずに放置していた場合、時効期間で債権が消滅することになりますが、権利を行使することで時効の進行を中断させることができます。
未回収の売掛金がある場合には、時効の中断をして債権の消滅を防ぐのが大切です。
時効を中断させる方法は、「請求」「差し押さえ、仮差し押え、仮処分」「承認」の3つに大別されます。
請求には、裁判上の請求と裁判外の請求が含まれます。裁判上の請求とは、裁判所に支払督促や民事調停の申し立てなどを行うこと。
裁判外の請求は、内容証明郵便による請求が一般的ですが、こちらは時効を最大で6ヵ月中断させるのみとなっています。
差し押さえ、仮差し押さえ、仮処分は、相手の財産の差し押さえなどを行うこと。
承認は、支払約束書にサインをもらったり、一部だけでも支払ってもらったりすることで債務者に債務の存在を承認してもらうことを言います。
以上、売掛金の消滅時効と時効中断の方法についてお伝えしました。
未回収の売掛金がある場合は、時効期間となる前に権利を行使して時効を中断するのが大切です。